なぜ賛否両論なのか?東野圭吾『ラプラスの魔女』
東野圭吾(以後、東野さん)の『ラプラスの魔女』の評判の賛否が分かれているとの噂を聞き読むことにしてみました。
東野さんの作品は昔から好んで読んでいます。
文庫本はほとんど持っており、思い入れもあるので東野さんの1ファンだと考えています。
今回『ラプラスの魔女』がなぜ賛否分かれているのか考えてみたいと思います。
詳しい描写は一切書きませんが、少しのネタバレも先入観も無く読みたい方はこちらの記事お控え下さい。
壊すとは
作者の『これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。そしたらこんな作品が出来ました』というコメントでも話題になったこの作品。
東野さんといえば日本のミステリー作家を引っ張る存在。その東野さんの『壊す』にはどういった意味合いがあったのか、自分なりに受け止めてみると。
これまで東野さんが書いてきた『ミステリー』の概念を変える
今までの『ミステリー』はあくまでも人間が起こしてきた殺人などの犯罪がテーマとなり、
『作品の中にあるヒントや伏線などから犯人を紐といていく』
内容でした。
これは東野さんの作品に限らずなのですが、『ミステリー』作品の一般的な形です。
ところが、今回の作品『ラプラスの魔女』では特殊能力が大きく関わってきます。(特殊能力の詳しい描写を書くのは控えます)
確かに『ミステリー』の概念は壊す形になってきます。特殊能力の一言でいろいろ解決していくのでミステリー界を引っ張る今までの東野さんの作風に反しているとも言えます。
ミステリー作家として真っ向勝負を待っているファンも大勢います。そういった方々からは物足りなさを感じるのかもしれません。
人間関係が浅く感じる?
ネット上の意見を見てみると物語の、人間関係の描写が浅いとか人間性が希薄に感じるといったコメントを多く見かけます。
こちらに関しては過去の東野さんの作品、『手紙』『秘密』『白夜行』を振り返って考えると、あえてこういった作風にしたものと感じました。
ここに対する賛否は大きいようですが、もし気になるようでしたら『あえてこういった作風にした』という解釈のもとで読んでみて下さい。私はその解釈をしたからか違和感なく読めました。
さまよう刃が好きですか?それともプラチナデータが好きですか?
さまよう刃といえば言わずと知れた大作、東野さんの作品の中でも最も評価の高い作品の一つです。
プラチナデータは映画でも嵐の二宮和也が主演を務め話題となった、ミステリーではありますがSFの要素の入った作品です。
両方読んだ事がある方への質問です。
さまよう刃が好きですか?それともプラチナデータが好きですか?
さまよう刃が好きな方は『ラプラスの魔女』を読んでも物足りなさを感じるかもしれません。物語の深さ、意外な結末で楽しむ作品とは少し違うからです。
プラチナデータが好きな方はSF要素もある『ラプラスの魔女』を楽しめるかと思います。構成やアイデアで読ませてくれる作品です。
プラチナデータも賛否の分かれる作品となっているので、多くの東野さんファンが求める物は『物語の深さ』『意外な結末』なのかもしれません。
まとめ
こちらの作品、面白いのは間違いないですよ。
構成とアイデアが斬新で練られていて。
ただ東野さんの作品だという先入観なしで楽しんだほうがいいかもしれません。賛否の分かれる一番の理由は東野さんに求める作品と少しずれているからだと思います。
私は『プラチナデータ』も楽しく読めた側の人間ですし、今回の『ラプラスの魔女』も楽しむことが出来ました。
ラプラスの魔女
過去の東野圭吾さんの作品はこちら。
個人的にはこういった方向性の作品も増やしてもらえると読む幅が増えて嬉しいかもしれない。