一晩置いたカレーに発生するウェルシュ菌 食中毒の症状や対策予防は
先日、食品衛生講習会に行ってきました。
飲食店の食品衛生責任者は3年に一度義務付けられている講習会になるのですが、ここ最近の食中毒の発生事例や食品業界ではお馴染みの菌の危険性などを改めて学んでくる機会になります。
そんな感じで学びたてほやほやになるのですが、せっかくなのでみなさんにも身近な菌の危険性を紹介したいと思います。
私の記憶がしっかりしている内に。
唐突ですが、みなさん、
一晩置いたカレーは好きですか?
カレーは一晩置いた方が美味しいなんてよく言いますよね。
具材のもつ旨み成分や甘み成分がソースに溶けだしてコクが増し、肉・野菜・香辛料に含まれる糖質やタンパク質などの成分が絡みあうことで、独特のコクが生まれる。
こんな感じで、気のせいではなくちゃんと理にかなっている訳ですね。本当に美味しくなっている訳です。
でも一晩置いたカレーは菌が発生し危険だというような内容のテレビや記事などを一度は見かけたことがあるのでは?
一晩置いたカレーなどに発生する菌はウェルシュ菌という名前の細菌です。
でも菌が発生するなんて分かっていても、カレーを一度に食べきれる量だけ作るなんてことなかなかしませんよね。一度に大量に煮込んだ方が美味しくなりそうですし。
ですので、あらためてその危険性をおさらいしましょう。
ちなみに煮物や出汁でも一晩置くと同じように発生しますので危険性は一緒です。
ウェルシュ菌対策と思いしてきた事が意外と間違っているかもしれません。
ウェルシュ菌とは
ウェルシュ菌は、河川や下水、海、耕地などの土壌や、人間や動物の大腸内にも常在しているすごく身近な細菌です。
大腸を洗浄をしようが何をしようが存在する大腸内常在菌です。大腸菌みたいなものです。
どちらにしても、食材に野菜や肉、魚を使う地点でどんな料理にも存在しているので食さずに生活をするという事は不可能です。
ウェルシュ菌は空気に触れていると増えないので、生野菜にウェルシュ菌が付着していてもウェルシュ菌の食中毒になることはまずありません。
ですがどんな食材にも存在しうるということを頭に留めておきましょう。
なぜ一晩置いたカレーが危険か
酸素がまわりにあるような、環境ではウェルシュ菌にとって住みづらいので『芽胞』という耐環境形態になっています。
この『芽胞』という状態がとてもやっかいなんです。
加熱が効きづらい
この『芽胞』の状態では増殖はできませんが、とにかく強いです。
100度でぐつぐつ加熱をしようがそうそう死滅するような事はありません。 とにかく屈強で強靭なやつなんです。
そして空気に触れた食材がカレーに投入され煮込まれるので『芽胞』というで生き残ってしまうのです。
冷えていく途中で増殖
そしてカレーを一晩置く過程で菌が増殖します。
他の菌は煮こまれた時に死滅していますのでライバルも居ない訳です。独壇場で増殖することが出来ます。栄養だらけですし。
ウェルシュ菌にとって45度前後が理想の温度となり『芽胞』から通常の菌体に戻り増殖します。
45度は一晩置くと必ずなる温度ですよね。ちなみに10分で倍ものペースで増え続けます。
火を通したから起こるという特殊な食中毒になります。
ちなみに30度ほどでも増えるので夏場なんかに外に鍋のままで置いておくと増えたいほうだいです。
無味無臭
これもまたやっかいな問題。
ウェルシュ菌って無味無臭なんですよ。味や匂いに違和感を感じとれないって訳です。
というか、これはウェルシュ菌に限った問題ではないんですよ。食中毒って味や匂いに違和感を感じる事ってほとんどないんですよ。だって違和感を感じたら食べませんので。だから集団食中毒って起こるんですよね。
弁当を買った翌日に食べて「お腹痛くなった」なんて言っても保健所の人には相手にしてもらえないから気をつけて下さいね!?
そんなのは自己責任ですので。
なんでもかんでもお店の責任ではありません。全くの無菌状態の弁当なんて作れないので。
保健所の人もちゃんと公言してます。
弁当の賞味期限内でちゃんと冷蔵庫に入れて常温にもほとんど晒していないというのであれば別ですが。
ウェルシュ菌の食中毒の症状
ウェルシュ菌の食中毒の症状は、原因食品を食べてから6〜18時間後(多くは12時間以内)に現れます。
腹部の膨満感(ぼうまんかん)で始まり、下痢、腹痛が主な症状となります。
発熱、吐き気および嘔吐はほとんどみられません。
下痢は水様性で2〜6回程度みられます。
基本的にこの症状が2日から3日ほど続きますが、まれに粘血性の下痢を十数回起こす重症例もみられます。
ウェルシュ菌で起こる食中毒の原因
ウェルシュ菌自体はありふれていて常に人体にも居ます。
そのウェルシュ菌がなぜ食中毒の原因になるのかというと、エンテロトキシンという毒素が関係してきます。
下痢原性のない常在ウエルシュ菌はエンテロトキシンを産生しません。食事により腸管に取り込まれたウエルシュ菌が腸管内で菌体から芽胞になる際に菌体内にエンテロトキシンが形成され、菌体の崩壊と遊離芽胞形成に伴い菌体外に放出されます。
まぁこの知識は知っても知らなくてもなんですが、体内に居るウェルシュ菌は悪さをしない訳ですね。
ウェルシュ菌で食中毒にならない為の解決策
ウェルシュ菌の一番の解決策は、一度に食べきれる量を作るってことですね。菌の繁殖しようが無いので。
でも上記にあるように大量に作りますよね。カレーにしても煮物にしても。
なにより一晩置いたカレーや、煮物の方が美味しくなる訳ですし。
大量に作り翌日も食べる事を前提とした解決策を上げると。
急速に冷却をする
カレーを鍋のまま外に置いておくと菌が発生しやすいという認知は大分広がっているのですが鍋のまま冷蔵庫に入れる家庭が多いらしいんですよね。
うちの実家もそうでした。
45度前後で発生する訳なので常温になってから冷蔵庫に入れてももう菌は発生した状態です。
仮に鍋ごと温かいまま冷蔵庫に入れてもなかなか冷え切らないんですよね。菌が繁殖しやすい温度の45度前後の時間帯が意外に長いのです。
45度前後の時間をどれだけ短くするかがすごい大事になってくる訳です。
少し面倒なのですが、小分けのタッパーなどで分けて冷蔵庫に入れるのが理想です。
これ私個人の見解ではなく保健所の見解ですので間違いないと思います。
少し温かいうちに入れちゃうってことになりますが、菌の発生は大幅に抑えられます。
ウェルシュ菌が熱に強いのは
これ意外に知られていない事なんですけど。
カレーに繁殖する菌は熱に強いというイメージだけ持っている方が多いのでは?
間違ってはいないのですが、熱に強いのはウェルシュ菌が『芽胞』の状態なんです。
上記にもあるように、酸素に触れた状態だから『芽胞』になっている訳です。ですので一晩置いたカレーは『芽胞』から通常の菌体に戻り増殖した状態なので、けして熱に強い状態ではありません。他の菌と一緒です。
要はグツグツしっかり煮れば基本的には死滅します。
死滅していれば腸内で菌体から芽胞になり毒素をばら撒くような事もありません。
ただ、なかなか一晩置いたカレーをグツグツ煮込むような事もしませんよね?具材に火は通った状態なので温める程度にしかしない方がほとんどだと思います。
結果、食中毒を招いてしまう訳ですが、もしウェルシュ菌が心配な状況を作ってしまったら意識的にしっかり煮込みましょう。
出来れば沸騰10分。ちょっと厳しいですけど。
まとめ
意外と知らなった事も多いのでは?
ウェルシュ菌が体内でどう変化して食中毒になるかとかはどうでもいいのですが、ウェルシュ菌は日常に溢れており、ウェルシュ菌を原因とした食中毒は身近に起こりうる事ですので、一晩保存しておく方法や加熱のことなどを意識しておくと役に立つかも知れません。