イグ・ノーベル賞 過去の日本人受賞者は?賞金は?
世の中を笑わせ、考えさせた研究や業績に贈られる今年の「イグ・ノーベル賞」の発表が17日、米ハーバード大であった。キスをするとアトピー性皮膚炎患者のアレルギー反応が弱まることを示した大阪府寝屋川市の開業医、木俣肇院長(62)が医学賞をスロバキアの研究者らと共同受賞した。日本人の受賞は9年連続となった。
朝日新聞デジタル
イグ・ノーベル賞って一度は耳にしたことがあるのでは?
上記にあるように、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる賞になります。
キスをするとアトピー性皮膚炎患者のアレルギー反応が弱まる、聞くだけでユニークですが、具体的にどういった内容の研究をしたかというと。
受賞理由は、「情熱的なキスの生物医学的な利益あるいは影響を研究するための実験」。木俣さんは、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の患者と健常者それぞれ30人ずつ計90人に対し、それぞれの恋人やパートナーと静かな音楽の流れる個室で30分間、自由にキスをしてもらった。キスの前後でアレルギー反応の強度を調べる皮膚テストや血中成分を測定したところ、改善傾向がみられた。2週間後、今度は同じカップルにキスをせずに部屋で30分抱き合ってもらったが、効果は確認されなかった。さらに性交でもキスと同様の効果があることを確かめ、2004年に論文を専門誌に発表した。
ザ・ユニークといった内容の研究ですね。
30分、自由に情熱的にキス。日本人にはなかなか厳しい条件にも感じますが、なぜこの発想に至ったのでしょうか?不思議です。
賞自体の歴史はそこまで深くなく1991年に作られたもので、選考対象は5000を超える研究や業績(自薦も可)で、複数の選考委員会の審査を経て行われます。
そして、受賞は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」の条件をクリアした10程度の個人や団体が選ばれます。
1995年には、フランスのシラク大統領が、世界の反対を押し切り水爆実験を行ったことに対して「ヒロシマの50周年を記念し、太平洋上で核実験を行った」として平和賞を受賞しました。ユニークだけではなく、時には皮肉を効かせた理由でも賞が与えられる事があります。
授賞式もユニーク
授賞式は毎年10月にハーバード大学で行われます。
受賞者の、旅費や滞在費は自己負担となっており、賞金も出ません。スピーチでは笑いを取ることが求められています。ノーベル賞では最初にスウェーデン王室に敬意を払いますが、イグ・ノーベル賞ではスウェーデン風のミートボールに敬意を払います。徹底してますね。
スピーチの時間も60秒となっており時間が過ぎるとぬいぐるみを抱えた少女が現れて「もうやめて、私は退屈なの」と連呼します。その少女を買収することによりスピーチを続けられますが、買収に失敗し贈り物だけ持ち去られてしまう事もあります。
とにかく、とことんユニークな構成にこだわった賞となっています。
日本人が受賞した内容
今年で9年連続で受賞となってなっていますが過去24回のうち19回で日本人が受賞をしています。
具体的にどういった内容で受賞をしたのかを見てみると。
- 1992年 医学賞
「足の匂いの原因となる科学物質の特定」という研究に対して - 1995年 心理学賞
鳩を訓練してピカソの絵とモネの絵を区別させることに成功したとして - 1996年 生物多様性賞
岩手県で、ミニ恐竜、ミニ馬、ミニドラゴンなど1000種類以上に及ぶ0.3ミリ以下のミニ種の化石を発見し、いずれも絶滅したという研究に対して - 1997年 生物学賞
「ガムを噛んでいるときに、ガムの味によって脳波はどう変わるのか」という研究に対して - 1997年 経済学賞
「たまごっち」によって数百人分の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせたことに対して - 1999年 化学賞
夫のパンツに吹きかけることによって浮気を発見できるスプレー「Sチェック」を開発した功績に対して - 2002年 平和賞
犬語翻訳機「バウリンガル」の開発によって人と犬との調和と平和をもたらした功績に対して - 2003年 化学賞
「鳩に嫌われた銅像の化学的思考」兼六園にある日本武尊の銅像に対して鳩が寄り付かない事をヒントにカラス避けの合金を開発したことに対して - 2004年 平和賞
「カラオケを開発し、人々がお互いに寛容になれる手段を提供した」功績に対して - 2005年 生物学賞
131種類のカエルがストレスを感じているときに出す特有のにおいを全部嗅ぎ分けカタログ化した研究「においを発する蛙の分泌物の機能と系統発生的意義についての調査」に対して - 2005年 栄養学賞
34年間もの期間、自分の食事を撮影し食べたものが脳の働きや体調に与える影響を分析したことに対して - 2007年 化学賞
牛の排泄物からバニラの香りの成分『バニリン』を抽出した研究 - 2008年 認知科学賞
単細胞生物の真正粘菌にパズルを解く能力があることを発見したことに対して - 2009年 生物学賞
ジャイアントパンダの排泄物から採取したバクテリアを使うと、生ごみの質量を90%以上削減できることを示したことに対して - 2010年 交通計画賞
鉄道網など都市のインフラ整備を行う際、真正粘菌を用いて、輸送効率に優れた最適なネットワークを設計する研究に対して - 2011年 化学賞
緊急時に寝ている人を起こすのに適切な空気中のワサビ濃度を発見しそれを用いたワサビ警報装置の開発をしたことに対して - 2012年 音響賞
- 自身の話したことを、少し遅れて聞かせることで、その人の発話を妨害する装置「スピーチジャマー」を発明したことに対して
- 2013年 化学賞
玉ねぎに含まれるアミノ酸を反応させると、催涙物質が作られ涙が自然と出てくる仕組みになっている研究に対して - 2013年 医学賞
心臓移植をしたマウスに、オペラの椿姫を聴かせた所、モーツァルトなどの音楽を効かせた場合より拒絶反応が抑えられ長く生きられたという研究に対して - 2014年 物理学賞
バナナの皮を人間が踏んだ時の摩擦の大きさを計測した研究に対して
もはや内容を見ただけでは、訳の分からない内容もありますね。
日本人の中に皮肉で受賞をしている人は居ないようなので安心しました。
まとめ
すごくユニークな賞ですが、今まで注目されていなかった研究が大々的に世間に知れ渡るにはいい機会なのかもしれません。
ポストイットだって強力な接着剤を作ろうとしたら出来た弱い接着剤から作られているし、ユニークな研究からだって思わぬ発見に繋がり生活に役立つものが出来上がるかもしれません。
後の評価でノーベル賞も受賞するような事も出てくるかもしれませんね。